まつぼっくりが笑う

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「反日種族主義」李榮薫編著 読後感5

従軍慰安婦問題

 この問題こそが現在日韓関係悪化の最大の問題点です。

私自体小説等で従軍慰安婦の存在自体は中学生のころから知っていましたが、本当の所はよく理解しておりませんでした。慰安婦は戦争につきものの必要悪であり、兵の戦意高揚のために役立つだろうが困ったものだというぐらいの認識でした。

  日本以外の国でもあったわけですが、第二次大戦のときは戦いの規模が大きく、組織的に行われたと感じていました。だから、慰安婦がけしからんというなら、その前に戦争がけしからんということになるのだろうと。大日本帝国軍が組織的にシステムとして行っていたことは間違いがないと思います。ただ組織的に行われていたとしても日本軍自体が表面に出て直接実行していたとは思えませんでした。それは当時の日本軍は相当官僚化しており、自己責任を逃れる体制にあったので、慰安婦の様なあまり公にしたくないことは全て民間の業者に任せていたと思うからです。事実、日本人慰安婦については日本の業者が、朝鮮人慰安婦については朝鮮人業者が取り仕切っていたようです。

 

 この書を読んで慰安婦の実態がかなり正確に理解できました。韓国人が書いた書であるが故に我々から見たご都合主義でもなく、客観的、正確な記述だと感じました。日本人が書くと正当化することは出来なくても言い訳の連続に聞こえてしまいます。読んだ韓国人は出鱈目か、言い訳だと怒りに油を注ぐようになってしまいます。

 

 1951年朝鮮戦争時、慰安婦は韓国軍そしてアメリカ軍にもいました。当然ですが全て韓国人女性です。面白いのは「私は日本軍慰安婦でした」と申告した女性は170人。私は米軍慰安婦でしたと申告した女性は2,3人だそうです。韓国軍慰安婦だという女性は一人も名乗り上げませんでした。日本では何万人という日本女性の慰安婦がいますが誰一人私は慰安婦だという人はおりません。余程の補償金がもらえるのならともかく、普通は恥ずかしくて隠しておきたいことだからです。

 

 それでは隠しておきたい慰安婦であったということを何故、金学順という女性は告白したのでしょうか?それも戦後46年を経過した1991年にです。

 

 1983年吉田清二が『私の戦争犯罪 朝鮮人強硬連行』という本を出しました。本を出した意図はわかりませんが、内容は済州島で民家や工場にいる女性が集まって作業をしている所を包囲し、夫や家族が遮ると銃床で殴り、軍刀で追い払った上205人を強制連行したというものです。1989年、「私はこのように朝鮮人を強制連行した」というタイトルで翻訳・出版され多くの韓国人に読まれました。本人の告白ですから誰でも信じてしまうでしょう。

 

 日本では部数の多い朝日新聞がこれを取り上げます。ジャーナリストとして最高だと自負する朝日新聞の記者がこれを記事にし、当然トップもこれを認めるのですから、多くに日本人もこれを信用します。日韓関係が悪化するような記事ですから綿密な調査と分析があったと多くの人は思います。朝日新聞はこの記事の嘘を事実が分かった後も32年間頬かむりし続けます。

 

 李栄薫氏が調べたところ済州島でそのようなことがなかったということがわかりました。「済州新聞」でさえしばらくしてから、この証言はおかしいと報道しました。普通の一般人がためにする嘘を述べたのではなく、日本を代表する朝日新聞が日韓関係を揺るがす大誤報をしたのです。2000年代になって吉田清二の息子が、自分の父親が書いたことは全て嘘だと明かしますが、時すでに遅しです。新聞社の訂正記事の小さなことは多くの人が知っていることです。

 

 吉田証言が韓国で知られる前まで韓国内では慰安婦問題は存在しなかったのです。日韓請求権交渉においても議題にすら上らなかったのです。