まつぼっくりが笑う

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コロナウィルス騒動(続4)

仕事の上手な人と下手な人

 

  • 仕事、医療や政治、経営に携わる人たちは誰しも仕事が上手になること、腕を上

げることを目指して、日夜努力している。これはスポーツや芸事の世界でも同じである。私が趣味としている囲碁の世界でもそうだ。アマチュアは腕を上げると楽しみが増えてくる。プロの場合は生活が懸かっているので、上手なこと、強いことは、収入に直結する。だから、アマチュアとは比較にならない努力をしている。

 

これから述べることは、囲碁の世界の話である。囲碁には「定石」と言うものがあ

る。将棋では「定跡」という。この定石と言うのは古来の名人と言われる人たちが、最も正しい打ち方をした、最善の打ち方を凝縮したものである。したがって、定石を学ぶことは上達する上で大事なことである。

マチュアで定石をほとんど知ると中級者である。定石を局面に応じて使い分け、最善の定石を自在に選択できるようになれば、高級者である。ではプロはどうなのだろうかという疑問が生じる。プロは、定石に囚われず、常に最善の手を打つ。言ってみれば打つ手打つ手が定石になるというレヴェルである。言葉を変えると、定石という枠を超えて、その時、その場面で最善手を打つということだ。そのためには柔軟な頭脳が求められる。

何故、コロナウィルスと関係がないような囲碁の定石の話をするかと言うと、コロナウィルス対策をしている、政治家、官僚、医療関係者に上手、下手の差があまりにもあって、それが国民に大きな影響を与えていることに不安を感じるからだ。勿論、テレビに出ているコメンテーターにも実力の差はある。私如き素人が偉そうにと思う人がいるだろうが、それは間違いだ。国民一人一人が声を上げる権利があるからだ。だって、民主主義ってそういうことなのではないのだろうか?まあ、直接かかわることが出来ないので、岡目八目のきらいはあるが、だからこそ、冷静に見ることが出来ると言えるのではないか。

 

〇検査の上手な国、下手な国

今回、検査が上手な国に韓国を挙げることが出来る。何故上手だったか?上手であることの条件の一つに、経験という要素がある。韓国では、2003年のサーズ、そして2012年のマーズの被害国だった経験がある。検査体制がその時構築されていたので、今回でも素早く対応出来た。

日本では奇跡的に、サーズ、マーズの感染者が全くなかったので経験値がなかった。しかし、能力的には高いものを持っているので対応がうまくできるかと思っていたが、

 

急激なコロナの発生に対して後れを取らざるを得なかった。それが、ダイヤモンド・プリンセス号の被害拡大をもたらしてしまった原因だ。まあ下手だったということになる。それは、あの時、乗員、乗客3700人余の全数検査をする能力がなかったからだ。そのため、このクルーズ船の留め置かれた期間が長くなり、船内感染が大幅に増えてしまった。全数検査により、軽症者はホテル三日月の様な隔離施設に送り、陽性の重症者は入院させれば、多くの人間を早く下船できたのだ。

検査を含めて対応の名人ともいうべき、素晴らしい対応をしたのが台湾だった。まさに、名人芸ともいう素晴らしさで、世界中の絶賛を浴びた。そんな真似は簡単には出来ないが、少しでもそれに追いつくように、下手は下手なりに高みを目指して努力すべきだろう。

 

〇対応の上手な知事

今回のコロナウィルスの対応で名人芸を見せた知事が何人かいた。

 

仁坂和歌山県知事

仁坂知事は国が設定した37,5度C以上の高熱が4日間続いて初めて検査をするという基準に囚われずPCR検査をした。国の基準は定石に相当する。これを守って行動している分にはだれからも非難されない。その結果、事態が悪くなっても国の責任だと言えるからだ。何故、仁坂氏の判断と行動力が名人芸かと言うと、コロナウィルスをどうやって抑え込むかが知事や国のトップに求められている責務だということを認識しているからだ。

国の基準を守るだけならだれにでもできる。腕の差は出ない。しかし、国の基準と言う定石を越えて、柔らかい頭で、どうしたらコロナウィルスの感染を防ぐかという、目的に一直線に取り組んで実績を上げことは、並みの腕ではない。しかも、検査をしようとした時、和歌山県の検査能力が足りないことがわかった。これも並みの腕の知事であったら、仕方がないと判断して、クルーズ船の時と同じ対応をしただろう。そして、そのような対応はこれも誰からも非難されない。並みの下手な腕の持ち主は、必ず言い訳材料を探して、自分を安全地帯においておくという、別の意味の才能を発揮する。

この時、彼は自分の県で検査能力が足りなければ、他の都道府県の助けを借りようという発想をした。これは、そういうことをした知事がいたという事実が知れ渡った後からは、だれでもそうすればいいと考える。コロンブスの卵だ。素晴らしいアイデアは知ってしまえばなあんだと言うものが多い。しかし、だれか先駆者がいないと、結構気が付かないものだ。彼は大阪の吉村知事に協力を求めた。その結果、和歌山県はコロナウィルス封じ込めに成功した。院内感染の大本であった、有田病院も再開にこぎ着けることが出来た。

 

 

吉村大阪府知事

吉村知事も素晴らしいアイデアを示し、名人芸を披露してくれた。何故、日本でPCR検査を抑制する動きがあるかというと,検査で陽性と判明した患者は無症状でも軽症でも入院が義務付けられているため、入院患者が増えた場合、重症患者の治療が出来なくなってしまう。所謂、医療崩壊につながるからだという。よく例に出されるのがイタリアだ。しかし、病床の少ない感染症医療機関には、命の危険性のある重傷者を入れ、軽傷者や無症状の患者は病院以外の別の隔離施設に入れれば、この問題は解決する。

これも言われれば誰しも理解できるが、そんな隔離施設は簡単に見つからないとか、自宅待機は家庭内感染が発生するといった言い訳材料が首をもたげてくる。

吉村知事はそのような変な常識を打ち破り斬新なアイデアを出した。このアイデアを実行するためには廃止病棟を探し出して整備をしたり、客が居なくなって経営に困っているホテルを活用すればよい。そのためには、精力的に動かなければならないが、トップの責務として、固い決意を示したことが素晴らしい。

結局、腕の善し悪しは、不測の事態に対応できない基準や取り決めを打ち破る勇気があるかどうかによる。何度も言うが、言い訳人間は、悪くても国の決めた基準は守るべきだ、その結果が悪くても自分には責任はない。要するに、国民の命と安全を守ると言う美しい言葉は口先だけで、お上には逆らわない方が生きていく上で賢い方策だと思っている。自分に出来ないことを美しい言葉で飾るのが下手の証だ。孔子は言っている。「巧言令色少なし仁」

 

鈴木北海道知事

何故か、北海道で感染者が急増。国に先駆けて非常事態宣言をした。2週にわたって外出禁止の要請を市民に訴えた。この素早い判断力、と行動力が光る。

感染を防ぐには、ワクチンとか治療薬がない現在、打つ手は限られている。密閉された空間、多くの人が居る場所、近くでしゃべる、声を出す場所を避けて、兎に角隔離策しかない。世界各国すべて、隔離策を講じている。腕の善し悪しは、それを何時宣言し、実行に移すかである。

鈴木知事はそのスピード感が素晴らしい。

 

  • 名人芸に学ぶ姿勢

 

世界を見ても、国内であってもコロナウィルス対策で模範となる名人がいる。あらゆる、スポーツや芸事の世界は激烈な競争にさらされている。どこかの誰かが素晴らしい結果を出した途端、世界中に知れ渡って、その技術は素っ裸に分析されて真似をされてしまう。囲碁で言えば、今、一番優れているのはAIである.日、中、韓の囲碁の名人が

 

束になってもかなわない。AIが名人中の名人だ。人間の名人たちが競ってAIから技術を盗んで、自分の腕を高めようと努力している。

これはスポーツや芸事の世界では常識である。強いものや優れたものから学ぶ、それを学んで自分を高める。

ところが、コロナ騒動で厚労省や加藤厚労大臣に、その姿が全く見えないことに驚かされた。彼らの腕が名人級でなくても、私はそれを非難するつもりもないし、資格もない。うまくなくても上手になろうと努力している姿を見せれば、それはそれで尊敬に値すると思っていた。しかし、実態はとんでもないことが分かった。

国会で野党から加藤厚労大臣に質問があった。和歌山県のコロナ対策は素晴らしい。それに学ぶことは考えないのか?これに対して「個別の案件にはいちいち取り上げない。また、和歌山県でどういう施策をしたか存じ上げていない」

これをテレビで見ていた私は呆れると同時に驚いた。だって、よその国の話ではない、国内の話で、しかも最も大事なコロナ対策の件ではないか。これだけの成果を上げ、だれもが見習うべき名人芸を知らなかったり、無関心だとしたら、これは異常な神経としか言いようがない。しかも、担当大臣だよ。

なんぼ何でも知らなかったのでは加藤氏が可愛そうだから、知っててとぼけたとしよう。とすれば、何故とぼけたのか。それは厚労省の役人が和歌山県のやり方に不快感を持ったからだと断定できる。当然、加藤大臣も不快感を持ったはずだ。何故か?それは厚労省が決めた基準を仁坂知事が守らなかったからだ。

厚労省の役人や大臣にとって大事なことはコロナ対策がうまく行くかどうかより、自分たちの決めたことを守るかどうかだったからだ。こういうのを、本末転倒と言う。省益優先が体に染みついているので、本当にコロナ対策に身をささげているとは思えない。

当然、大阪の吉村知事に対しても不快感をお持ちだろうことは想像できる。吉村知事の提唱したフォローアップセンター構想は厚労省でも検討されたことだろうから、余計腹が立ったのではないだろうか。先に出されてしまったかと。腕が悪いのは仕方のないことだが、物事に必死に取り組まない姿勢は非難に値する。

 

〔3月16日記〕